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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 安い品物?少し高くても品質のいいものを  
コラム名: 自分の顔相手の顔 501  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2002/01/30  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ユニクロを持っていない人はいない、とどこかの新聞に書いてあったが、私も友達がつい先日、わざわざ私の分まで買いに行ってくれたから2枚もフリースを持っている。

 先日外国旅行へ行く時、1枚はフリースがあると便利だと思って、何枚か手持ちのを出して着てみたが、フリースがまだ今ほど流行っていない頃、結構な値段で買って来たものと比べて、最近の安いものは明らかに重いので、やはり軽い方をカバンに入れてしまった。

 私はもう長い間通信販売で生活しているようなものだが、それは買い物に行く時間がないからである。日本人の標準としては少しばかりデブで背が大きいのが災いして、9号サイズの美女たちのようにどこででも服を買えるというわけにいかない。もっぱら寝る前にカタログを見てオーダーして済ませている。

 しかし最近つくづく思うのは、不条理なほど安い品物が増えすぎたことだ。先日地方のスーパーにスリッパを買いに行ったら、1足290円である。その話を大金持ちにしたら「その人も買いたがっていたよ」と夫は笑っていた。小売価格が290円という値段を考えてみると、製造の段階で、搾取とか、重労働とか、何か願わしくない状態が隠れていそうにも思う。

 ものごとには道理の範囲というものがあるはずだ。安ければいい品質は望めない、という一応の理屈を、消費者もはっきりと意識するべきだろう。そんな簡単なことを、教養のあるいい人たちが考えずに、安ければ喜んでいると薄気味悪い。

 安すぎる食品はどこかに怪しい点があるはずだ。どんな混ぜ物をしているのか、どんな調理法なのか。どこかで品質を落として手抜きをしなければその価格で売れないのに、消費者が安さに眼がくらんだとしたら危険だ。

 私ていどのサイズ(縦も横も)の女性は今いくらでもいると思うのだが、日本の既製服の身長は今なお162センチまでなのだ。サイズも、ドイツやアメリカで言うと、1つ下の小さなものまでしか売らないケースが多いから、仕方なく私は外国製品を買っている。防寒具など、日本製は裁断に余裕がないから美的でもなく、何よりきついと寒いのが困る。

 今この時期に、わざと少しだけ高くて品質のいいものを売り出せば、競争に巻き込まれて共倒れにならなくて済み、しかも安物の氾濫にあきあきし始めた消費者のエリート感も満足させられるのではないか、とこのけちな私が最近思うようになった。
 



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