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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 評価?迷いはさらに深まるばかり  
コラム名: 自分の顔相手の顔 496  
出版物名: 大阪新聞  
出版社名: 大阪新聞社  
発行日: 2002/01/09  
※この記事は、著者と大阪新聞社の許諾を得て転載したものです。
大阪新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど大阪新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   私が働いている日本財団は昨年も財団の出資先であるインドでもっとも疎外されている部族の子供たちだけが通う学校の宿舎建設の事業に対して、果たしてお金が効率よく使われたかどうかを判定するために、評価会社に調査を依頼した。

 この手の会社は現在、日本にはまだ1社しかないのだそうだが、今後ますます必要になって来るものだろう。ODAでもNGOでも、出したお金の使われ方を調査しないで出しっぱなしにするほど無責任なことはないからである。12月に、この寄宿舎があるインドの町へ、財団が調査団を出した時、私はこの評価会社の人を同行することにした。数力月後に彼の会社から報告書が出た時、一番よくわかって読めるのは同行した私たちで、いわば評価会社の評価を評価できることになるかもしれないからであった。

 この旅行の間に、私は経験を積んだ専門家と評価というものについて度々語り合い、さまざまな角度の調査方法を教えられた。私にも自分なりの調査のやり方はあるつもりなのだが、それはまず、一から疑うこと。足と体力でしぶとく現場でねばり、多くの人にこちらが持っているデータに関して同じ質問を繰り返して問題点を浮かび上がらせる、という方法。後は独自の直観によっているだけだから、あまり信用してはいけないのである。

 この人と途中で別れた後で、私が個人的に働いている海外邦人宣教者活動援助後援会という小さなNGOが資金を出し、現在建築中の南アのエイズ患者のためのホスピスのことを、私はしきりに思い出した。私たちから2千万円を出させて20床のエイズ病棟を建てている日本人の根本神父が先日20日ほど日本に来ている間に、南アでは神父が心身両面の面倒を見ていた26人のエイズ患者が死んでいた。このあまりの数の多さに、神父は改めて衝撃を受けていた。

 私たちが建てるエイズ病棟で、将来、1カ月20人の患者が死ぬ場合と、10人しか死なないで済むようになった場合と、こうした評価会社はどちらをよしとするのか。もちろん死者の数が少ないのがいいと思うのが普通だが、病棟の本来の目的は、見捨てられた患者に安らかな死の日を与えることとすれば、その目的に叶う時、評価が高くなるのか。それともエイズ病棟を建てること自体、人間を肉体的には今のところ生かすことにはならないのだから、間違った投資先だと見なすのか、私の中の迷いは更に深まるばかりである。
 



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