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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 海峡をともす光 (1)  
コラム名: マラッカ海峡の町から 第9回  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2001/09/21  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  イユケチル島の灯台は海峡最大の難所を照らし出している


 マラッカ・シンガポール海峡内には数多くの灯台、灯標が点在している。

 日本財団がマラッカ海峡協議会を通じ、海峡内に45の航路標識を設置しているのは、知られているところだが、沿岸各国(インドネシア・シンガポール・マレーシア)も独自に整備している。また、古くは植民地時代にイギリス・オランダが作ったものもある。イギリスは、19世紀半ば、シンガポール沿岸にホースバーとラッフルズの2つの灯台を建築している。

 また、オランダも同時期にインドネシア沿岸に灯台を建築している。そのひとつが、イユケチル島にある灯台で、現在でも灯をともし続けている。

 イユケチル島は、マラッカ海峡に浮かぶ周囲200メートルほどの小島であリ、カリムン島に隣接している。

 この島の灯台は、マラッカ海峡内最大の航行の難所フィリップチャンネルヘと向かう航路を照らしている。

 その勤務は、3カ月交代であり、3カ月後に交代要員がスマトラ島中部の都市ドマイから派遣されてくる。

 その間食料の補給もない。生活水も天からの恵みの雨に頼っている。この島は、標高30メートルほどの小山でできている。この山の頂に鉄骨やぐら組みの白い灯台が作られている。

 灯台からは、遠くシンガポールの工場地帯の繁栄を望むことができる。

 島の眼前の海域は、マラッカ海峡東部の航行の難所、南にドリアン海峡、北にジョホール水道への結節点であり、船舶通行量の極めて多い海域である。

 イユケチル島は、本来、無人島であるが、現在は5人の灯台守が住み、海峡を照らし続けている。

 現代の技術では全自動制御も可能であろうが、機材の購入費用を考えると人件費の方が安く、人力を選ばざるを得ないのがインドネシアの国情であろう。

 イユケチル島は、全体が岩礁に覆われ、その一部、幅10メートルほどだけ砂浜があり、唯一、小型ボートが島に近づける場所である。

 クレーンもない時代に鉄骨や大型レンズを運び込み、無人島に灯台を作り上げた先人たちの苦労と努力が偲ばれる。

 マラッカ海峡の航行安全を守るために、多くの人々の言葉では語り尽くせない苦難があった。

 海峡の恩恵を受ける我々が忘れてはいけない人がいる。

 海上保安庁OBの金子昭治氏(73)である。金子氏は、1973年、日本国政府の行う海外技術協力でインドネシア沿岸の航路標識整備を手がけたのを始めとし、30年近く、マラッカ海峡の航行安全に尽くしてきた。
 

マラッカ海峡協議会の団体情報へ  


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