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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 青少年に海の重要性を伝えよう  
コラム名: 日本の生命線を守る 9  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2000/04/11  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   「海は広いな大きいな…」という唱歌を皆さんご存知だろう。「海にお船を浮かばせて行ってみたいな、よその国」。
 海沿いの町に育った私は、幼いころ二歳違いの兄と港に立ち、「海の向こうはアメリカなんだ」と教えられたことを覚えている。私にとって、遠い外国との接点は、まさに海・港であった。
 今、人々の意識の中で海外との接点は、空港になってしまった。海外旅行も航空機を利用する。テレビなどの報道では、外国の要人の来日からボジョレ・ヌボーの輸入まで、空港の情況が取り上げられている。
 港から遠い異国へ思いを馳せる時代は、すでに過ぎ去ってしまった。もっとも、海岸線は背丈を越える潮防堤で囲われ、波打ち際はテトラポットで埋め尽くされた。私の育った町の海は、今では二キロ以上も埋め立てが進められ、遠い彼方へ行ってしまった。
 いつのまにか日本人の意識の中から、海は遠ざかり、稀薄な存在となってしまった。
 現在の小学校の教科書の中で海について教えることは、ほとんどなくなっている。地球環境問題がクローズアップされ、学校教育の中に取り組まれているが、地球の表面積の七割を占める海について触れられていないのが実情である。
 神戸で水先案内人を勤める稲葉八洲雄氏は、御自身のホームページ上で、海運に関することが小中学生の教育から消えてしまったことを嘆き、日本船主協会の教育普及活動に言及している。
 「海」は、教科書の中から消えてしまったが、いくつかの地域や学校では独自の「海」に関する教育を行っている。
 二月五日(土)東京都渋谷区立代々木小学校において「浜のかあさんと話そう会」という催しが開かれた。愛嬢県の漁協のお母さん達か、自分たちで養殖したタイやハマチを運び、家庭科の授業の中で子供たちに魚料理を教え、また、暮らしの中での海の重要性について自らの体験を通じて話してくれた。
 この事業を主催したのは、東京のNGO団体「ウーマンズ・フォーラム魚」(白石ユリ子代表)である。美味しく、安心して食べられる魚を通して、我が国の暮らしにおいて、海の重要性を教育の中から再認識することが、この事業の目的である。
 白石代表は、都内の教育委員会や学校を訪ね海洋教育の重要性を唱え理解を求めると共に、日本各地の漁村を回り協力者を集めこの企画を実現した。はじめて見る五キロを超える大きな魚を前に、海の恵みに驚き、目を輝かせていた子供たちが印象深かった。
 東京都港湾振興協会では、日本財団の補助金を受け都内の小学生たちが港湾施設を中心とした社会見学を実施している。感受性の強い時期に船・海を身近に感じる貴重な機会を与えている。
 また、子供たちに「海」を伝えるために日本海事広報協会の行っているさまざまな海の知識の普及活動も重要である。
 日本人の生活が海上交通により運ばれる物資に依存していることは言うまでもない。原油、鉄鉱石、小麦などの殻物。それらは、海を通り輸入されている。いわば海運は、日本に生活の粗を送り続ける生命線である。また、今後の食糧供給は、魚類に依存するところも多い。日本における生活は、海に支えられていることは確かだ。
 青少年に対し海の重要性を伝え、海洋環境を考え、船の役目を教え理解してもらうことは、ひいては海上安全、海洋保全につながる。
 多くの子供たちが海に興味を持ち、将来海洋問題や航行安全にたずさわるようになり、日本の生命線を守り続けてもらいたい。
 



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