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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 不惜身命の心意気があるかどうか 4)  
コラム名: 元気覇気勇気 28  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1999/02/04  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ??前回、指導者たるものは、自国への正しい歴史認識を持ち、教養としての哲学と、芸術文化への理解の三つが不可欠とのお話でした
 
 笹川 それがこれからの二十一世紀に国際的に通用する指導者としての必要な最小限度の教養です。それなくして外国人を説得できません。
 
 ??でも、現実には、それ以前の人が多い
 
 笹川 そうです。おっしゃるとおりです。大体そんな問題提起した人もいないでしょう。
 
 ??どうすれば…
 
 笹川 だから、自分たちが指導者だと思わないことですよ、それは(笑い)。
 それからメディアにも問題は多々あります。
 メディアのみなさんは、「私たちの基盤は商業主義です」ということを明確に意思表示しなきゃいけない。それをいわずして、天下国家を論じ、世論形成に力があることばかりを誇示しています。メディアはこの二つの性格を持ち合わせてるんですね。商業主義というものを後ろに隠しておいて、日本の世論を作ってるのは自分たちだという、メディアのみなさんの傲慢(ごうまん)な姿勢は国民の判断を誤らせてきてますね。
 私はメディアのみなさんが、自分たちがいかに強大な力を持っていて、国民に対してどれだけ強い影響力を持ってるかということを十二分に自覚自戒したうえでの活動をしていただきたいと思います。
 
 ??わかります
 
 笹川 国家とか国民とかについての議論をする前に、いつも目前の現象だけを論じているような気がします。
 政治家の月旦(げったん=人物評のこと)についても、こんな立派な政治家はいないし、この人は将来可能性があるなんていう議論をしたことがない。欠点ばかり指摘している。しょせん人間なんて完全なものではないんです。まず人間は不完全なものであるという前提に立って議論や批判をしませんとね。
 前に申し上げたように、指導者としての必要条件はありますが、同時に指導者も完全なものではないということを認めてあげないといけないんです。政治家についても、政策立案能力や説得力でもって評価すべきではないでしょうか。
 
 ??その点、理事長は世界を駆け巡り、多くのリーダーたちとお会いですが、どのような印象を受けられましたか
 
 笹川 指導者というのは、英国流のノブレス オブリジ(高貴な者は行動も立派であるべき)というものを勉強したかどうかは別にして、国家や国民のために身をていして働く、あるいはそのために命を捨ててもいいという精神構造ができあがっていなかったら、なるべきじゃないんですよ。
 
 ??お会いになった方たちは、そうだった?
 
 笹川 みなさん、民族としての誇りをお持ちですね。
 
 ??日本では、いかがですか
 
 笹川 私の知る範囲では、ちょっと…。ただ、日本の若い政治家のなかには、高等教育をきちっと受けて、国際的な教養も身につけてる方も、最近はたくさんいらっしゃるとうかがっております。
 私はそういう方にあまりお会いしていませんので、くわしくはわかりませんが。ただ、不惜身命(ふしゃくしんみょう=命を惜しまないこと)の心意気があるかどうか問題ですがね。
(特集部長 細野憲昭)


 



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