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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: ペルー フジモリ大統領 3)  
コラム名: 地球巷談 7  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/02/16  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  貧困層の識字率向上に力
 フジモリ大統領との最初の出会いは、就任後まもなく、日本を訪問されたときです。日本財団に小学校を造ってほしいとの要望があり、わたしたちは五年問で五十校造る計画を立てました。今年中にはすべて完成します。
 昨年二月、ペルー訪問の際、大統領はヘリコプターでペルー各地を案内してくださいました。日本財団の造った学校には、特徴があり、みなインディオ好みの赤茶色でペイントされており、一見してすぐわかりました。学校は貧困地区の町や村の中心に作ったので、地域のコミュニケーションセンターにもなります。反政府ゲリラも学校建設には無条件に賛成せざるをえません。
 フジモリ氏は南米各国の指導者のなかでも、ただ一人、非白人。非富裕階級の出身。エスタブリツシュメント出身ではありません。だからこそ、貧困の問題を本当に理解できるのでしょう。
 自身も苦学し、大学教師として、長く教育に携わってこられました。
 「日本の発展も教育の力に負うところが多い」と早くから教育の重要性を訴えてこられた人です。
 大統領二期目の重要政策としても、雇用の拡大とともに教育の充実を挙げておられます。お会いするたびに「特に貧困層の子供たちの識字率を上げることに力を入れる」と熱っぽく話されています。
 いまひとつ、長期的に大統領が取り組もうとしているのが産児制限です。大統領によると、子だくさんのインディオの人々は、コンドームの存在を知らないか、知っていても、白人専用のものと思っているらしいのです。貧困が子だくさんを生み、子だくさんが貧困につながるという悪循環です。それなら、日本財団でも協力できる、と今具体的に話を進めているところです。
 大統領であるがゆえの厳しさ、孤独も並のものではないはずです。前回、紹介しましたクスコからヘリコプターを使い、マチュピチュ遺跡を訪れたときのことです。山道を徒歩で登り山頂に着くと、大統領は一人岩に座り、物思いにふけっていました。かつてのインカの栄光といまのペルーをだぶらせ歴史の興亡に思いを致していたのでしょうか。十分程度でしたが、その大統領の姿には近寄りがたい雰囲気がありました。そして、帰りの機中、「少し横になっていいでしょうか」と断り、大統領は毛布にくるまりました。外柔内剛の人、フジモリ大統領の疲れ切った寝顔に国をあずかる者の孤独がありました。
 日本大使公邸占拠事件の人質のなかには、大統領の実弟と義弟が含まれています。断固、テロリストには屈せずとの姿勢を貫く大統領の胸中は、いかばかりでしょう。平和ボケのわたしたちには教えられることが多々あるのではないでしょうか。
 



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