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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 運航者の技術は安全に不可欠  
コラム名: 日本の生命線を守る 6  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2000/03/01  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   海運の世界は、地球規模の競争と協調が最も進んだ世界ではないだろうか。日本の海運業界にあっては、船舶乗組員の混乗化の進行により、単独国の運航者により運航されている外航船は極めて少ない。複数の国の船員により我が国の海上輸送は、支えられている。
 海運の世界の乗員国際化は、わが国だけのことではない。アジア海運の中心地シンガポールにおいても多国籍にまたがった船員により船舶が運航されている。
 「シンガポール海運協会(SSA)は、インドに三カ所の船員学校を開設する」との新聞記事を読んだ。シンガポールは十年ほど前より、自国船を増やす政策を続けており、今や世界有数の船籍保有国となっている。自国船籍の増加とともに、船員数も増加し、その船員の質の低下を防ぐため、特に最近増加傾向にあるインド人船員の教育に力を注ぎはじめた。
 我が国においても船員教育の充実は、重要な課題となっている。日本人船員が減少する中、フィリピン人をはじめとした外国人船員知識と技術の向上は、日本の生命線である海上交通路を確保する上で必要不可欠な問題である。日本郵船をはじめとした国内有力船会社は、フィリピンにおいて船員教育を行うなどいくつかの外国人船員のレベルアップの施策を実施している。
 平成十一年十一月、「アジア太平洋地区海事教育・訓練機関連合」の会議が東京にて開催された。この会議は、日本海技協会が、日本財団の補助金を受け実施したものである。日本の船会社に多くの船員を供給しているアジア太平洋地域の海事教育機関の代表者が一堂に会し、海事教育の一定以上の水準を保つための施策の話し合いが持たれた。
 民族・文化などが違う国々の海事教育機関の代表者が、それぞれの立場から海事教育の現状や今後の課題・他国との強調などを話し合い、国際化が進行している船舶運航の状況下における共生を求める議論が展開された。
 アジア地域のみならず世界規模においても海事教育のレベルアップを図る動きが進んでいる。
 平成十一年十一月にトルコのイスタンブールにおいて、世界の海事教育機関で構成する国際海事大学連合(IAMU)の設立準備会合が開催された。この準備会合には、五大陸を代表するかたちで七カ国・八大学から二十五人が出席した。日本からは、東京商船大学と独戸商船大学が参加している。
 国際海事大学連合は、国際化、複雑化が進んでいる世界の海上交通の安全性向上と他国間にまたがった運航者の共通の認識下においてのレベルアップを図ることなどを目的とし、海事教育機関の国際協力体制を構築するものである。
 具体的なテーマとしては、1)高水準の次世代型教育・訓練システムの構築と新たな国際的な船員資格制度の創設2)船舶運航に関する知識、技術を備えた陸上分野における専門家を育成するカリキュラムの作成及び安全管理技術者の資格化などに取り組む予定である。
 日本財団では、高水準の海運指導者の育成、国際化が進む船舶運航の安全性を求める観点から、この「国際海事大学連合」の発足を支援している。
 造船の技術が高度化し、船舶航行も自動化、機械化が進んでいるが、やはり海上交通の安全を守る第一は、運航者の知識と技術である。
 日本の運航者の持つ、高度な知識と技術は、世界的に高い評価を受けている。しかし、航行の安全を確保するためには、乗組員全員の一定水準以上の技量が必要となる。
 そのためにも、世界中の海事教育機関による知識と情報の共有化によるレベルアップは、新たな海上交通の枠組みの中にあって重要なポイントとなっている。
 



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