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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 北朝鮮 故金日成主席 2)  
コラム名: 地球巷談 2  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/01/12  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  米国との関係改善に意欲
 前回に続き、故金日成主席との会見の模様を紹介します。九〇年の金丸訪朝団との合意に基づく日朝国交正常化交渉が、核開発疑惑などで難航している現状を金主席は「交渉は間違いだった」と語りました。金主席があげた理由の一つが、与党自民党と最大野党社会党の代表が交わした約束ごとが実行されない日本の政治状況への判断ミスです。
 金主席があげた今一つの判断ミスは、日米関係にかかわるものでした。「軍拡に走る米国は債務国に転じ、営々経済の発展に努めた日本は世界一の経済大国となった。今日、日本は米国に追従することなく独自の外交を展開するものと考えていた」というわけです。
 私は、日本にとって米国の存在の大きさを説明しました。日米安全保障条約で結ばれた両国のきずなの強さから来る米国の影響力の大きさを説き、米国抜きの日朝関係正常化実現の難しさを指摘しました。
 金主席は米国の影響力の強さを説いた私の発言を熱心に聞き入っていました。猪口才(ちょこざい)なと思われるでしょうが、この私の発言が核疑惑などについての米国との直接交渉という北朝鮮の外交戦術転換につながったと自負しています。
 私が金主席と会見した九二年三月は、北朝鮮の核疑惑に米国が最も神経をとがらせていた時期でした。核施設へのピンポイント爆撃すら米国が真剣に考慮しているといわれていたのです。それだけに、ピョンヤン入りはいろいろと神経を使うものでした。
 さて、核疑惑についてですが、金主席は実験炉からの数グラムのプルトニウム抽出を認めたあと「核兵器を造るためには数十キロが必要。米国が宣伝するように半年以内に完成することはあり得ない」と断言。また「一発の核弾頭製造に成功しても、結局は蟷螂(とうろう)の斧(おの)。使えば一千発を超える核弾頭が降ってくる。そのようなばかげたことはしない」と不脅威を強調しながらも、一発の持つ重み、核の抑止力には一切触れなかったのが印象に残っています。
 また、チェイニー米国防長官(当時)が警告を発した北朝鮮船舶によるシリアヘのミサイル輸送を虚偽のものと否定、また米韓合同演習チームスピリッツの不当性を繰り返し強調するなど、米国からの軍事圧力には相当閉口しているようでした。いずれしろ、話の端々から金主席の米国との関係改善への意欲と模索のほどが感じられました。そこで、私が米国要人を招待するのが有効ではと助言、旧知の友人、カーター元大統領の名前を出しました。これが九四年のカーター訪朝につながったのです。
 



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