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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: カーター元米大統領 1)  
コラム名: 地球巷談 13  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/03/30  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  魚を与えるより釣る方法を
 今年一月、エチオピアのメレス首相からカーター元大統領に感謝の書簡が届きました。カーターさんと私たちが取り組んでいる農業増産計画『笹川グローバル2000』の大成功によって、今年、エチオピアは飢餓から脱出、はじめて余剰穀物が、隣国ケニアに輸出されることへの謝意でした。
 エチオピアの悲惨な飢餓がBBCのニュースを通じて世界に報じられたのが一九八四年。餓死者は百万人ともいわれました。故・笹川良一のもと日本財団は、世界の先陣を切って直ちに救援物資を送りました。
 一方、エチオピアの飢餓を契機にスイスのジュネーブを中心に世界各地で二十近い飢餓会議が開かれました。こうした数ある会議のなかからカーターさんは、旧知の父、良一の呼びかけに応じられました。ローマクラブのアレキサンダー・キングさんと共同主催で日本財団がバックアップする飢餓会議を開催されたのです。
 私たちの会議の結論は『魚を与えるより魚を釣る方法を教える』、つまり自助努力を促そうというものでした。世界銀行などの国際機関は「アフリカで食糧自給はむり」と実に冷淡なものでした。ともあれ、インド、パキスタンでの食糧増産への貢献でノーベル平和賞を受賞されたノーマン・口ーボーグ博士の指導を得て『笹川グローバル2000』はスタートします。近代農法ではなく、すきとくわを使っての単純な農法です。土を耕し、一直線に綱をわたした下に一定間隔に穴をうがち、種を入れ土をかぶせ、肥料を与える、ただし、種と肥料の実費は自己負担とする、それだけです。
 さまざまな調査の結果、まずスーダン、タンザニア、ザンビア、ガーナが対象国となりました。
 一九八六年、カーターさん、ローボーグ博士、父良一と私はカーターさんのプライベート・ジェット機で六日間で対象国四カ国を訪問しましたが、大変な強行軍でした。
 ジェット機に、ベッドは一床のみ。カーターさんと父はお互いに譲りあって小さないすに座っています。私はスキーで肩を骨折した直後で、ウンウンうなっていました。父は「それじゃ、この若者を寝かせましょうか」。カーターさんも破顔一笑、私は柔らかいベッドで白河夜船を決め込んだのです。ベッドの譲り合いの一幕を見ても、二人が相当の意地っ張り。そんなところも、二人が仲の良かった理由かもしれません。
 さて、『笹川グローバル2000』はエチオピアで開始されたのは一九九三年。五年にして食糧を輸出するまでになったのです。今、私はカーターさんと喜びを分かち合っています。
 



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