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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 実効ある海賊対策プランへ  
コラム名: 日本生命線を守る 8  
出版物名: 海上の友  
出版社名: (財)日本海事広報協会  
発行日: 2000/04/01  
※この記事は、著者と日本海事広報協会の許諾を得て転載したものです。
日本海事広報協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本海事広報協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   二月二十三日に発生した「グローバル・マース号」ハイジャック事件の乗組員は、三月十日タイにおいて保護された。韓国人七人、ミャンマー人十人全員が無事に本国へと帰国した。この事件においては、海上保安庁・タイ国政府、韓国政府が積極的に捜索活動など事件の解決へと努めていた。
 海賊問題には国際的な視野を持ち取り組んで行かなければならないということを痛切に感じる。昨年十月に発生した「アロンドラ・レインボー号」事件を例に取ると、船主は日本。乗組員は日本人とフィリピン人。船籍はパナマ。
 本船はインドネシアを出港後消息を絶つ。その後乗組員はタイで救出。本船はインドのコーストガードにより捕捉された。
 また、積み荷はマレーシア領にて移し替えられたと言われている。これだけでも七カ国が関係している。船籍の問題を超えた国際的な協力関係の構築が求められる。
 国際連合海上警察機構の設置とか、国際機関による海上警備の提案もされているが、新たな国際条約の締結が必要となると、多くの時間と議論が必要であろう。
 とくに、東南アジア諸国においては、国家の主権の問題に触れることには非常にデリケートであり、慎重に対処する必要を感じる。しかしながら、海上交通の安全を守るためには国際間の協力関係が必要である。
 日本財団では、海上安全にかかわる既存の協力関係の枠組みの延長線上に海賊対策を置き、実現の司能性の高い協力関係の構築を支援して行きたい。
 たとえば、マラッカ海峡沿岸国は、海峡の航行安全確保のための協力を続けており、海賊対策についてもいくつかの共同行動をとってきた。このような関係をより実りあるものに拡大して行くことが急務であると思われる。
 この春、海賊問題に関する国際協力関係の構築を求める動きが活発になってきた。三月から四月にかけては、海賊問題に関する国際会議が目白押しである。三月二十二日から二十四日の間には、IMO(国際海事機関)が主催する海賊対策セミナーがインドのムンバイで開催された。
 国内においても四月にアジア諸国の海上警備機関の長官級による海賊対策会議が予定されている。海上保安庁ではすでに三月七日から九日の間、シンガポールにおいて海上警備当局部長級による海賊対策国際会議準備会合を開催し、海上安全の確保のための新しい枠組み作りをはじめた。
 日本の海上保安庁が中心となり、アジア海域の安全を守るための会議が開催されたことは意義深い。とくに、今回の会議がシンガポールにおいて開催されたことに注目したい。
 現在、海賊問題が多く発生しているのは、インドネシア沿岸およびマラッカ海峡などの東南アジア海域が中心である。海賊問題は一国の力ではとうてい解決がつかない。
 海賊事件が多発する沿岸国および周辺国の海賊問題に対する意識を高めることは、沿岸警備の充実を図り、海賊への牽制となり抑止効果が働くことであろう。この会議に対するシンガポールをはじめとした沿岸国の注目度は、現地の報道などを見るときわめて高かったようだ。
 実際に海賊事件が発生した時に対応する各国の警備機関が密接に連携が取れるネットワークを構築しておくことが、この会議の第一の目的であった。シンガポールにおいての三日間の議論により、第一の目的はクリアーされた。さらなる実効性ある海賊対策プランが今後の会議の場において話し合われ、行動に移されることだろう。
 日本財団では、海上航行の安全を守ることは日本の生命線の確保につながることから、海賊対策国際会議、IMO海賊セミナーを支援している。
 



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