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著者: 相澤 佳余  
記事タイトル: 「基層文化を撮る」ということ 〜NPO活動は志から〜  
コラム名: 特集/NPOフォーラム'99   
出版物名: NPOのひろば  
出版社名: 日本NPOセンター  
発行日: 1999/11  
※この記事は、著者と日本NPOセンターの許諾を得て転載したものです。
日本NPOセンターに無断で複製、翻案、送信、頒布するなど日本NPOセンターの著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   今回のフォーラムで、思いがけず素晴らしい映像(「ぜんまい小屋の暮し」)を拝見する機会を得た。初日の冒頭から始まった基調講演での経験である。無知な私は、民族映像文化研究所所長の姫田忠義さんの存在と活動を、この時初めて知ったのであるが、これまでのNPOフォーラムで行われてきた公開討論等とはまた趣の異なる、しみじみと感慨深い味わいがあった。
 
23年前からのNPO活動
 姫田さんは、もともとは経済学を専攻されて住友商事に勤務された企業人でいらしたが、23年ほど前より民族映像文化研究所というNPOをつくられ、そこを拠点に、日本の基層文化の映像記録の撮影活動を開始された。その映像数114本。今では時代や世代を超え、地域を越えて日本のみならず海外でも鑑賞されているという。
 姫田さんの活動は現在の私達の民間非営利活動、いわゆるNPO活動の先駆けである。そのNPO活動の一つのメルクマールともいうべき今回のNPOフォーラムの規模と参加者の熱気に触れられ、姫田さんが活動を始めた頃と今では隔世の感があると述べられた。23年前というと1970年代である。市民活動といったら左翼運動ととられかねないような時代であろう。その頃からこつこつと映像を撮りつづけた活動、その根本には何があったのだろうか。
  
「志」を持ちつづけること
 講演の中で、姫田さんは「志」という言葉を強調されたように思う。NPO活動を行うには志が大切だということである。一人一人が生きる力を見失いがちな現代社会において、志こそが生きる力をはぐくんでくれるとも述べられた。志とは、己の利益以外の価値観にしたがった目標を持ち、それを貫いていく姿勢を指すのだと思う。市民が主体となった住みやすい社会を形成するという志、NPOをセクターとして育てていこうという志など、参加者の心の中にも多種多様な志が存在するだろう。あるいは、志をたてるきっかけを求めに来た人もいるかもしれない。姫田さんは、このフォーラムの意義の一つは志の手がかりを与え合うことだとおっしゃった。NPOという形態のなかで、何かを体現していきたい、あるいは目標に向ってどうアプローチしていくべきか、そんな迷いを持っている人も多いだろう。そういった人々がこの大きなフォーラムでたくさんの人と巡り合い触発しあうことによって志を立てることができたら、このフォーラムの担う役割はますます大きなものとなるのではないだろうか。
 そして姫田さんは、その志を自覚すること、忘れないこと、ずっと培って行くこと、あきらめないことの必要性を語られたように思う。その継続性こそがパワーになっていくということである。そうした考えに立たれているからこそ、23年間もこつこつと地道な活動を続けてくることができたのではないだろうか。
 
NPO活動はそこで生きる人のためのものであってほしい
 実際の映像活動を行うにあたっては、基層文化の担い手である村の人々に密着し、生活をともにしていく必要もある。「映像を撮るということは人と付き合うこと」という姫田さんの言葉は、その活動はただ文化を記録するのではなく、まさしく文化の担い手である人そのものを含めて再発見し、理解し、映像のなかで昇華していく過程なのだろう。例えば、ダムに沈む予定の村を撮影にいく。そこには豊かな自然と残すべき文化がある。村人はすでに十数年に渡ってダムの建設反対運動をしてきたが、ここにきて運命を受け入れる決意をしつつある。そんな村に足を踏み入れると、ダムの建設反対を叫び始めたくなる。「あきらめずに反対しつづけよう」と。それに対し、村人は「自分達の決意に反する人は出ていってほしい」とにべもなく言い放つ。その裏には、「我々の長年の苦しみがわかるか。付け焼き刃の知識と感情だけで我々が理解できるのか」、といった想いがある。
 こうした村人の気持ちを丸ごと受け入れていかなければ、その村の文化は撮れないと姫田さんはおしゃった。何百年という長い歴史のなかで育まれたその土地に密着した文化。それを撮る、残す、伝える活動。それはすなわちそこの人々を受け入れ、自分の中に溶け込ませていくほどの覚悟がなければいけない。その場限りのもの、一過性のものであってはならない。志とはそういうものだ。そんな風におっしゃりたかったのではないだろうか。フロアに向って姫田さんは言葉を投げかける。「NPO活動はそこで生きる人、地域の人々と一緒に生きて行動していくためのものであってほしい」と。
 しっかりと地に足をつけた地道な活動こそが明日の活路を開くのではないか。こんな思いをめぐらしながら、映像に見入ったひとときであった。
 



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