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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 朱鎔基・中国副首相 1)  
コラム名: 地球巷談 47  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/11/23  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  「年齢」に首相への自信
 十月中旬、中国の朱鎔基副首相とお会いする機会がありました。北京は、ちょうど第十五回中国共産党大会が終わった直後、党大会の余韻が感じられる時期でした。天安門広場も全国から集まる代表を歓迎する菊やポインセチアで彩られた飾り山が鎮座していました。
 ご存じの通り、中国共産党大会は五年に一度、開催されます。今年の大会では七十歳定年制を導入、喬石さん、劉華清さんの二人の、長老が政治局常務委員を離れ、江沢民体制のもと「改革開放、社会主義市場経済」のとう小平路線が党綱領に公式に盛り込まれ、一眉の推進が決定されました。二十一世紀に向けて命運をかけ、社会主義市場経済という未知の海原に乗り出す巨船・中国の海図を描き、かじを取るのが朱鎔基さんです。
 現在の肩書は、共産党政治局常務委員で、経済担当の副首相ですが来年三月の全国人民代表大会で李鵬さんに代わり、首相に就任することが内定しています。
 今回お会いした場所は紫禁城に隣接した、党・政府要人が日常居住し、執務する中南海の接待所「紫光閣」でした。開口一番、飛び出したのが日本のマスコミヘの批判でした。「先日、衆議院外務委員会の皆さんにお会いした。若い先生方にお目にかかり、自分の年を感じる旨を述べたら、『引退を示唆』と報じられてしまった。おかげで香港の株価が五百ポイントも下落した」と真剣なまなざし。「私の真意は年を重ねた分、次の世代への責任があり、そのため、一生懸命頑張るということだったのだが」とかなり不満げでした。
 この十月に誕生日を迎えた朱鎔基さんは六十九歳。髪は黒々、色つやもよく、とても古希近い人には見えません。私たち一行のなかには白髪まじりの者もいましたので、「白髪の人も見受けられますが、皆さん私よりお若い方ばかりです」と話し、さらに私の年齢を引用しながら「年齢」へのかかわりは続きました。私はこの尋常でないかかわりに、首相としての職務遂行への自信と意気込みを感じました。
 一期五年の首相職を務めあげたときの朱鎔基さんは七十四歳です。一部には今回の党要人への七十歳定年制適用は政治的なものであり、実際には融通無碍(ゆうずうむげ)と解釈するむきがあります。
 確かに中国での政治の世界では何が起こっても驚く必要はないでしょう。しかし、私は首相の座を中国経済の行く末が定まった段階で、きれいに身を引く覚悟とみています。朱鎔基さんは文化大革命当時、地方に下放され、辛酸をなめた経験があります。それだけに、老いた指導者が国民にもたらす「老害」の悲惨さを知り尽くしているはずですから。
 



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