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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: 中国 故とう小平氏 4)  
コラム名: 地球巷談 12  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/03/23  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  真心をもって惻隠すること
 とう小平さんが「義侠」を大切にする人だったことは、すでに話しました。
 さて、日本財団では一九八六年以来、毎年百人の中国人医師の研修生を受け入れ、日本の国公立の医科大学や大学医学部で勉強してもらっています。最終的には二十年間で二千人の中国人医師が、日本で近代的医学を習得することになっています。白髪三千丈の中国を相手にして気宇壮大な計画と、いささか自負しています。
 実はこの研修制度のもともとの発想も、「義侠」にかかわりがあります。孟子は「惻隠の心は仁の端なり」と述べています。私は、真心をもって惻隠することが、「義侠」であると思っています。「医は仁術」ともいいます。思想信条を越えて日中両国関係に役立つ一つの道が医学研修だと考えたのです。
 実施にあたり、中国側につけた注文は、広く中国全土から人材を集めること、対象者がすべての医療分野にまたがること、の二点でした。
 まず、中国衛生部(日本の厚生省)が日本での研修を希望する医師百人を選抜します。選抜された医師たちは三カ月間、中国側による日本語研修のあと、さらに吉林省長春にある施設に合宿、今度は六カ月間の日本から派遣した語学教師による集中的語学研修を受けます。そして、厳しいテストの末、合格者の来日となる仕組みです。すでに、この研修制度のOBから七十人もの大学教授が誕生しています。
 今年秋には千人のOBが、北京の人民大会堂に参集することになっており、旧交を温めるのを楽しみにしています。
 「十年樹木、百年樹人」
という中国のことわざがあります。人材を育成することの難しさと大切さを諭す言葉です。日本ではアジア人の人材育成に失敗しています。東南アジアはもとより、韓国、台湾の若者の目は今や欧米に向いてしまっています。
 唯一、中国だけに、日本に興味を持っている若者が多くいるのです。まして、日中両国は一衣帯水、いかに政治の仕組みや考え方が異なってもお互いにお隣の国であるという地理的条件は変わりません。
 さて、最後になりましたが、とう小平さんが亡くなられたことから、中国の将来を懸念する声を耳にします。
 確かに改革・解放政策の大きな成果のかげで、拝金主義、地域格差などのヒズミがでてきています。とう小平さんのまな弟子、江沢民さんにとってはこれからが正念場でしょう。
 しかし、七月の香港返還行事の陣頭指揮を執るのは江沢民さんです。
 



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