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著者: 笹川 陽平  
記事タイトル: ペルー フジモリ大統領 1)  
コラム名: 地球巷談 5  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 1997/02/02  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
  国家と民族の誇り考え
 ペルーのフジモリ大統領と一番最近お会いしたのは、昨年十一月十三日のことです。タイ、フィリピンヘの公式訪問の途中、夕刻東京に到着し、翌朝には出発という慌ただしい日程のなか、夕食の誘いを受けました。
 「お疲れでしょうから」と大統領の宿泊先、帝国ホテルの天ぷら屋でご一緒しました。風邪気味とのことで「コートを羽織ったまま失礼します」とわびられた後、くつろいで大好物の天ぷらを召し上がりました。
 大統領は、反政府ゲリラ「センデロ・ルミノソ(輝く適)」を壊滅状態に追い込み、治安の回復には自信をお持ちでした。それだけに、今回の日本大使公邸占拠事件は虚を突かれたということでしょう。
 しかし、今回の事件の責任は、日本大使館が負うべき面もあると思います。もちろん青木盛久大使は沈着かつ冷静な人物。ゲリラ側と立派に対応されていますし、大使館側を厳しく責めるつもりはありません。
 ただ、いくら治安がよくなったといっても、午後七時すぎに千人近いゲストを招いての屋外パーティーはガードが甘いといわざるをえません。
 ご招待を受けた大統領就任式に出席できず、昨年二月ようやくご招待にこたえペルーを訪問したときのことです。一夜、いま人質の身の青木大使から晩さんのお招きを受け、公邸をお訪ねしました。事前連絡のせいかもしれませんが、実に簡単な警備で驚いたことを記憶しています。青木大使も治安が大変よくなっていることを強調されていました。
 一方、占拠しているトゥパク・アマル革命運動(MRTA)武装グループに一歩も譲歩しないフジモリ大統領のスタンスは微動だにしていません。事件がどれほど長引こうと、変わることはないでしょう。
 これが日本で起こったとしたら、首相はどのように行動するでしょうか。どのような犠牲を払ってもテロには屈しないのが世界の常識にもかかわらず、マスコミ世論の大合唱のなか、身代金の支払いなど取引に応じざるをえないのでしょうか。確かに、世界の耳目を集めた大変な事件です。しかし、フジモリ大統領がこれまで直面してきた艱難(かんなん)辛苦を考えると、彼にとっては、あまたある困難のひとつにすぎないとさえ思えます。
 なにしろ就任したときは七〇〇〇%だったインフレ率を一〇%台にし、二万人が犠牲になったといわれる反政府ゲリラを押さえ込んだ大統領です。自身が生命の危機に見舞われたことも一度や二度ではないでしょう。
 これまで四回お会いしていますが、お話を通じ、「国家とは何か」、「民族の誇りとは何か」をいつも考えさせられます。
 



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