公営競技に関する現行制度と今後の基本的方策についての答申の件(長沼答申)
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公営競技に関する現行制度と今後の基本的方策についての答申の件
昭和36年7月25日 公営競技調査会会長 長沼弘毅
本調査会は、昭和36年3月15日第一回会合を開き、内閣総理大臣より先の諮問を受け、そ の後十回におよぶ会合と三回にわたる現地調査を実施し、かつ公営競技の施行者、実施者 及び警察消防関係者等の参考人の意見をも聴取して、調査審議を行った結果前記諮問に対 して次の通り答申する。
記
競馬、競輪、小型自動車競走及びモーターボート競走に関する現行制度とこれら公営競技 全般に対する今後の基本的方策について貴会の意見を求める。
答申 公営競技は、その運用の実情において、社会的に好ましくない現象を惹起することが少な いため、多くの批判を受けているが、反面関連産業の助成、社会福祉事業、スポーツの振 興、地方団体の財政維持等に役立ち、また大衆娯楽として果たしている役割も無視するこ とは出来ない。また、これらの競技が公開の場で行われていることはより多くの弊害を防 止する上において、なにがしかの効果をあげていることは否みがたい。 従って、公営競技に関する今後の措置に関しては、代り財源、関係者の失業対策その他 の方策等を供与せずに公営競技を全廃することはその影響することろ甚大であるのみなら ず、非公開の賭博への道を開くことになる懸念も大きいので、本調査会としては現行公営 競技の存続を認め、少なくとも現状以上にこれを奨励しないことを基本的態度とし、その 弊害を出来うる限り除去する方策を考慮した。これがため、おおむね左記の線にその必要 な改正を加えることが望ましい。
記
1 施行者については、都道府県単位に作られた一部事務組合を結成することが望ましい。 なお、この際施行者としてこの責任体制を確立すべきである。 また、競技場を所有していない施行者についてはその資格は限時的なものとし、主務大臣 が関係各省と協議して交代させる制度を採用する。
2 実施者については、中央における指導が直に地方における実施に具現されるよう、その 組織及び運営について可及的速やかに抜本的改革を加える。
3 入場料については、競技場の改善と秩序に役立つよう若干の値上げを行う。ただし地方 の実情に応じ地域差を設けることは差支えない。
4 投票方法については、各種公営競技間の統一をはかりつつ的中率を多くすることによ り、射倖心の加熱をさげるとともに、競技場における紛争を防止する見地から次のことを 検討する。 (イ) 重勝式は廃止する。 (ロ) 単勝、複勝式を中心として連勝式はこれを制限すること。 (ハ) 連勝複式を採用すること。 (ニ) 以上にかんれんしての枠のくくり方についても所要の改正を加える。また、特に紛 争の起る可能性のある枠のくくり方はこれを改善もしくは廃止する。
5 馬券、車券等の場外売場については、現在のものを増加しないことを原則とし、設備及 び販売方法の改善(例えば売場数を増加し、それをすべて屋内にすること等)に努力す ること。
6 公営競技による収益の使途については、公営競技発足当時との状況変化に鑑み、次の点 を考慮する。 (イ) 売上金の一部を、関連産業の振興に充当することとするが、その他の福祉事業、医 療事業、スポーツ、文教関係等にもなるぺく多く充当することとし、この趣旨を法律に 明記すること。 (ロ) 一部の地方団体において、その財政が公営競技に強く依存しているのは好ましくな いことであるので、国及び地方団体は協力して出来るだけ早く、かかる事態をなくすよ う努力すること。
7 公営競技場数、開催回数、開催時間及びレース数等については現規定よりも増加しな い。なお、開催日は原則として土曜、日曜及び国の定める休日とする。
8 競技場の環境を整備し、騒乱等の発生を防止するため、競技場内の設備を改善し場内管 理権を強化する。例えば常傭警備員を増加し、ノミ屋、予想屋等に対する取締りを厳重な らしめること。
9 不正レースの発生を防止し、競技内容の向上をはかるため選手関係者養成、訓練、管 理、欠格者の排除等その他必要な制度の改正を行う。
10 公営競技関係者の雇傭、労働その他の関係を近代化する。
11 公営競技について過度の宣伝行為を行わないよう自粛する。
12 法律の規定が細部にわたり過ぎると認められる点が少なくないので、出来るかぎり制令 に委任する等法律の簡素化をはかる。
13 現行公営競技の根拠法が異なっているため、各種公営競技間に均衡を失している点が少 なくないので所管各省においてこれを是正するよう努力する。
附 記 日本中央競馬会については、その経理を円滑にするため徹底的に検討する。
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