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(昭和55年度〜59年度)
第3節 魅力ある地域づくり
2.交通網整備と海外への技術協力 トラポリスの実用化研究
トラポリス(TRAPOLIS)とは、Transportation Po1isの略であり、「電車の走行する軌道空間を内包し、その軌道敷の上部空間を多目的利用(住宅、事務所、店舗、公園、各種公共施設など)に開放、提供した都市装置体である」と定義されている。
これは多部門にわたる学際的研究を要するテーマであり、多くの専門家の協力を必要とするため、日本大学理工学研究所に軌道空間都市設計研究委員会が設置され、トラポリス構想の研究が開始された。当初は、当時の国鉄敷地内の上部空間を利用して住宅の大量供給を図り、国鉄の赤字解消の一方策とすることが目標とされた。
軌道空間都市設計研究委員会は、昭和52年4月から57年3月まで国鉄山手線目白一高田馬場間をモデルとして取り上げ、技術面・採算面等の研究を終えたが、これを実用化するためには理論上の構想を調査・実験により実証していく必要があった。
57年暮れ、中曽根康弘首相は、全国消防大会に出席のため東京・三田の笹川記念会館を訪れ、笹川良一会長と懇談した。
このとき二人は、眼下に広がる国鉄品川操車場の広大な風景を眺めながら、今後の国鉄のあり方を話し合い、「こんなに広い土地の上が空いている。上手に利用したら国鉄の赤字解消に役立つはずだ」と意気投合した。
そのころ、笹川良一会長はトラポリス構想の研究継続について関係者から協力を懇請され、(財)日本科学協会に検討を委ねた。その結果、トラポリスの実用化研究が58〜61年度に同協会の手で、1)トラポリスの実用化に伴う社会的・工学的課題、2)多点入力地震波を受ける構造物の挙動、3)長大構造物の施工、等をテーマとして行われることとなり、本会は補助金を支出してその研究を支援した。
同協会での調査・実験により、トラポリス建設は多大の効果をもたらすことが認められ、理論上は実施可能であることが立証された。
トラポリスは大都市における従来のまちづくりの考え方を根本的に変えるものであり、将来における実用化が期待されている。

 トラポリス
 目白-高田馬場間構想模型


 多点入力地震実験の設備


 地震実験のための建築物

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